キッチンのリフォームにおいて、最もドラマチックな変化をもたらすのが、キッチンの場所そのものを移動させる「移設」です。壁を向いて作業していたキッチンを、リビングの中央へ配置して対面式に変えることで、家族との会話が増え、住まい全体の雰囲気も一新されます。しかし、この憧れの移設リフォームには、通常の交換工事とは比較にならないほどの高いハードルと費用が伴います。最大の理由は、目に見えない床下の構造にあります。キッチンには「給水」「給湯」「排水」「電気」「ガス」そして「排気」という六つのライフラインが集中しています。これらを数メートル移動させるためには、床を一度解体して配管を延ばさなければなりませんが、特に排水管には一定の勾配が必要なため、移動距離が長くなると床の高さを上げる必要が出てくる場合があります。マンションの場合は床下のスペースに限りがあるため、希望する位置まで配管が届かないというケースも少なくありません。このような移設工事にかかる費用は、設備の交換代に加えて、配管工事費や大工工事費、内装の全面的な張り替え費用として、プラス五十万円から百万円程度の予算を見ておく必要があります。また、換気扇のダクトについても、移動後の位置から建物の外壁にある排気口までを繋ぐルートを確保しなければならず、梁の状況によっては天井を低くする必要が出ることもあります。さらに、キッチンをリビングの主役にする以上、背面にある収納棚や冷蔵庫の配置もトータルでデザインしなければならず、結果としてダイニング空間全体の刷新に繋がるため、総予算は二百万円から三百万円を超えることが一般的です。それでも、キッチンを中心に家族が集まる空間へと生まれ変わる価値は非常に大きく、住まいの中心を再定義する一大プロジェクトとしての魅力があります。移設リフォームを検討する際は、まず自宅の構造上どこまで移動が可能なのかを専門家にしっかりと調査してもらい、目に見えるキッチンのデザインだけでなく、目に見えないインフラ部分の制約を正しく理解した上で、慎重にプランを練り上げることが成功への唯一の道です。
キッチン移設リフォームの難易度と工事費用の現実的な見通し