リフォームの現場に三十年以上立ち続けているベテランの大工さんに話を伺うと、畳からフローリングへの変更において、お客様が最も理解しづらく、かつ最も重要なのが「床下の造作」だといいます。表面的には板をきれいに並べるだけの作業に見えるかもしれませんが、実はその下にある見えない部分の仕事が、仕上がりの九割を決めるといっても過言ではありません。和室の畳を剥がすと、そこには荒床と呼ばれる下地の板が露出します。昔の家では、この荒床自体が波打っていたり、水平が取れていなかったりすることが多々あります。そこにそのままフローリングを張れば、数ヶ月も経たないうちに床がキシキシと鳴り始め、板の継ぎ目が浮いてきてしまいます。そのため、大工さんはまずレーザー墨出し器を使って、ミリ単位で正確な水平を確認します。その上で、新しい床材を支える「根太」と呼ばれる角材を等間隔で並べていくのですが、この根太の間隔が広すぎると床がたわむ原因になり、狭すぎると材料費と手間がかさみます。お客様からいただくリフォーム費用のうち、この見えない下地作りに割かれる工賃や材料費は決して無駄なものではありません。大工さんいわく、最近ではDIYで安く済ませようとする人も増えていますが、この高さ調整を完璧に行うのは素人には極めて難しく、結局は不具合が出てプロに泣きついてくるケースも多いそうです。また、畳を剥がした際、床下に湿気が溜まっていたり、カビが発生していたりすることも珍しくありません。優秀な大工さんは、ただ板を張るだけでなく、こうした問題を見逃さずに防湿シートを敷いたり、風通しを改善する提案をしたりします。これには追加の費用がかかることもありますが、土台が腐ってしまえばフローリングどころの話ではなくなってしまいます。畳からフローリングへの変更は、単なる化粧直しではなく、家の基礎を整える「外科手術」のようなものです。見積もりの中に、下地の補強費用や丁寧な養生費が含まれているのは、その大工さんがお客様の家を長く守ろうとしている証拠でもあります。
熟練大工が語る畳からフローリングへの床下工事の重要性