待望のマイホーム、ピカピカの新築住宅に入居して間もなく、壁紙にひび割れを発見したら、誰もがショックを受け、施工不良や欠陥住宅ではないかと不安になるでしょう。しかし、実は新築や築浅の建物で壁紙にひび割れが発生することは、決して珍しい現象ではありません。むしろ、建物が落ち着いていく過程で起こる、ある意味自然なことなのです。その主な原因は、建物を構成する木材やコンクリートの乾燥収縮にあります。住宅の建設に使われる木材やコンクリートには、施工時に多くの水分が含まれています。建物が完成した後も、これらの建材は数年かけてゆっくりと乾燥し、水分が抜けていきます。水分が失われると、材料の体積はわずかに減少し、収縮や変形が起こります。この動きが、内装の下地材である石膏ボードに伝わり、ボードの継ぎ目部分などに力がかかって、表面の壁紙が引っ張られてひび割れてしまうのです。これは、建物がいわば環境に馴染んでいくための成長痛のようなものと考えることができます。また、建物自体の重みによって、地盤や構造体がわずかに沈下する「初期沈下」も、築後一、二年の間に起こりやすい現象です。このごくわずかな動きも、壁紙にひび割れを生じさせる一因となり得ます。さらに、新築住宅は気密性が高いため、室内の温度や湿度の変化が建材に影響を与えやすいという側面もあります。エアコンの使用による急激な乾燥や、加湿器による湿度の変化が、壁紙のひび割れを誘発することもあります。これらの理由から発生するひび割れのほとんどは、幅の狭いヘアークラックと呼ばれるもので、建物の構造的な強度や安全性には影響ありません。多くのハウスメーカーや工務店では、このような初期のひび割れに対して、一定期間の無料補修サービスを設けていることが一般的です。新築のひび割れに気づいたら、まずは慌てずに施工会社に連絡し、点検と補修を依頼するのが適切な対応です。